天嶺堂

同人小説サークル「天嶺堂」のブログです。

合同を終えて

先日の僕ラブ新年会に来てくださった皆様、本当にありがとうございました。

単キャラジャンル縛りの分厚い小説合同が果たして見てもらえるのかと怯えていましたが、お陰様で多くの人に手を取って頂けました。

会場に来れなかったけど読みたいという方いらっしゃいましたらメロンブックス様に委託しておりますのでそちらをご利用ください。

ただ、現在店頭で扱われていないようですのでお手数ですが通販をご利用いただければと思います(在庫移動の申請は行っています)

 

さて、そんな合同ですが時間がなかったりページ数がカツカツだったりした関係で後書きが掲載されておりません。

そんなわけで掲載作品の感想とかちょこちょこ書いて行こうかと思います。

内容にも触れますので未読の方はここまでお戻りください。

お読みになった方、あるいは自分のようにネタバレを読んでも気にならない方のみ先にお進みください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「都合のいい旅路」逢崎らい

 

なげぇよ!!!

というのが最初の感想です。

規定より長くなるとは聞いていて、自分もそれを了承はしたのですが倍の量書いてくるとは思いませんでした。

お話の内容としては走行中の豪華特急の中に突然現れた死体と消えた乗客、ド直球です。

汽車という舞台装置によって読者をサクッと大正時空に引き込んだのは誠に見事。

彼は今回ミステリ初挑戦だったのですが、殺人事件の緊迫感を出しつつ果南のキャラクターを使ってうまく解していたかなと思います。

この辺もそうなんですが、梨子を有能に描写しつつ果南がきちんと探偵役を務めさせるバランス感覚良かったなと思います(書きかけの初稿を見た時はもう少し大人しかった)

 

「棺について」海沢海綿

 

読んだ方は分かると思うのですが、江戸川乱歩です。

しかも明智小五郎が出てこない方の。

本人も合同参加表明をした時から江戸川乱歩やります、と宣言しておりました。

内容は推理小説の原則からは若干外れるのですが、当合同はあくまでミステリ合同ではなく「探偵松浦果南を描く探偵小説合同」なので全然ありです。というか、オマージュ元の作品が狭義での探偵小説ではありません。

鞠莉と果南の会話のリズムが実に心地よいだけに、結末の気持ち悪さがとても際立ちます。

 

「そして果てに明ける」綾部卓悦

 

この合同で一番ロジカル、かつ安心して読める作品です。

一度心を落ち着けて貰えるようど真ん中に配置しました。

当合同の中では唯一ラブライブで既にミステリを書いている方ということで、その本領を発揮して頂いたのではないかと思います。

彼の他作品にも言えるのですが、ロジック重視な人が陥りがちな「キャラクターが疎かになる」という現象がほとんど見られないのが特徴かなと思います。

また、唯一Aqours全員が登場し、その全員を絡めた暗号(作成者の鞠莉は除きますが)を作る辺りにも「この作品でなければ成立しえない」事に拘って作っているのが伺えます。

 

サクリファイス」逆針

 

当合同一番の問題児です。

いや、面白いのですが重すぎてどこに配置するか悩みました。一人で解決しきれず、逢崎氏に相談したぐらいです。

ムラ社会のドロドロとした慣習に地元出身者である果南が部外者として挑むという、どちらかといえば大正というより金田一寄りの作品です。(金田一は完全部外者ですが)

最初に読んだ時梨子のシーンで「梨子が果南を引き継いで終わりか。なかなかいいじゃないか」と思ってスクロールしたら、ルビィのシーンでズドンと来て陰鬱な気持ちで読了しました。

梨子のシーンで終わっていたら当合同のトリはこの作品になっていたでしょう。

事件が起きて探偵がヒントを得ながら謎を解くという推理小説の原則には沿っていないので、当合同がミステリ合同であれば掲載基準を満たさなかったでしょう。

どうやら逢崎氏と多少打ち合わせていたらしく、彼の作品との繋がりがあるのもこの手の顔見知りで作る小規模合同の面白さかなと思います。

なお、実際の内浦村ですが明治22年に五つの村が合併して誕生し、大正の段階で人口が2600人以上という村としてはかなり大きなものであり、作中のように団結して部外者を排除するような事が出来そうなほど小さな村ではありませんでした。逆針さんには構想段階からお伝えしておりますので、彼は分かった上でやってますので突っ込んじゃだめですよ。

 

「隙意の二重創」雪村和哉

 

はい、自身の作品です。

孤島を舞台にしたかったのと、いわゆる視点者が犯人ってのをやりたくて書きました。

自分は何度かミステリを書いたことがあるのですが、プロットというものがどうしても苦手で、頭の中に必要な要素だけ整理して伏線の出し方やシーンは書きながら考えます。

このやり方、書きやすいのですが先が見えないのが欠点です。

結果として、長くなり過ぎました。

仕方がなく、容疑者からアリバイを聞くシーンを省略してなんとかそこそこのページに纏めた次第です。

もう少しライトな感じに終わらせる予定だったのですが、動機が思いのほか重くなってしまい校正やってくれたひとまるさんに若干引かれました。

色々やらかしてますが、この合同に不足気味だった科学捜査の要素を補えましたし、最後のシーンは気に入ってるので満足はしております。(ただしとんでもない誤植をしてます)

 

とまあ、こんな感じでしょうか。

キャラクターについては、やはり果南が主人公ということで三年生組の出演率が高めでした。次点で助手役を務めた梨子、HPTで探偵役を務めたのが大きかったのでしょうか。

その反面、曜の扱いには皆さん苦労されたようです。せめてもう少し普通の軍服っぽいデザインだったら士官候補生とか設定をでっち上げて出したかったのですが……推しの一人だけに、名前も出せなかったのがちょっと残念です。